暑すぎて外に出るのも辛い夏が終わって、寒すぎて出たくなる前の秋、季節の変わり目でなんとなく体が重い――。
そんなとき、ふとした香りが気分をリセットしてくれる瞬間ってありますよね。
朝、コーヒーを淹れたときに立ちのぼる香ばしい香り。
洗濯物を取り込むときにふわっと感じる柔軟剤の匂い。
玄関に残るお香のほのかな残り香。
香りは目に見えないけれど、確かに私たちの心に作用する力を持っています。
今回は、そんな“香り”の力を少しひも解きながら、
アロマフレグランスを上手に暮らしに取り入れるヒントを探っていきましょう。

嗅覚は感情と最も近い感覚 ―― 香りが心を動かす理由
香りを感じる“嗅覚”は、五感の中でも特別な感覚です。
目や耳からの情報は、いったん理性的な思考を司る「大脳新皮質」を通ってから処理されますが、嗅覚だけは例外。
香りの刺激は、鼻から入って嗅球(きゅうきゅう)という神経を経由し、
そのまま大脳辺縁系という“感情の中枢”に直接届きます。
ここには、記憶を司る海馬(かいば)や、感情を処理する扁桃体(へんとうたい)などがあり、香りは“思考よりも先に感情を動かす”と言われるのはこのためです。
たとえば、小さいころに家で食べたカレーのスパイスの香りを嗅ぐと、一瞬であの食卓の風景や母親の声がよみがえる――そんな経験はありませんか?これは、香りが「記憶」と「感情」をワンセットで呼び起こすから。香水にも同じ現象があります。“あの人の香り”を街で嗅いだ瞬間に、懐かしい気持ちがこみあげてくる。香りはまるで、時間を巻き戻すスイッチのようです。
香りと気分のスイッチ:脳と体に作用するメカニズム
香りが心を動かすのは感情だけではありません。自律神経やホルモンの働きにも関わっています。私たちの体は、「交感神経」と「副交感神経」という二つのスイッチでバランスを取っています。朝起きて活動的になるときは交感神経が優位に、夜リラックスして眠るときは副交感神経が優位になる。香りは、この切り替えをサポートしてくれる存在なんです。
たとえば、ラベンダーやベルガモットの香りを嗅ぐと、呼吸がゆっくり深くなり、副交感神経が活発になります。血圧や心拍数が穏やかになり、自然と「落ち着く」「眠くなる」と感じるのはこの作用。一方、ローズマリーやペパーミントなどの香りには、
交感神経を刺激して脳を目覚めさせる効果があります。頭が冴えて集中力が上がるので、朝や仕事の合間にぴったり。
また、香りは脳内ホルモンにも影響します。心地よい香りを感じたとき、人は「セロトニン」や「ドーパミン」といった“幸せホルモン”を分泌します。その結果、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が抑えられ、気分が安定するという研究結果もあります。
つまり香りは、単なる「良い匂い」ではなく、脳と体を同時に整えるスイッチなのです。考えごとが多いとき、頭を無理に切り替えようとしてもうまくいかないことがあります。でも、香りを変えると不思議と気持ちが切り替わる――。これは、香りが思考よりも早く脳に働きかける証拠です。
なかなか子供が勉強に向き合わないとか、きちんと問題が解けないという勉強の伴走中にもふとフレグランスで一呼吸もよいですよ。ビールを飲んでリフレッシュもありますが、さすがに朝や昼からビールを飲むわけにもいかないので笑
シーン別おすすめアロマフレグランス
朝のスタートに:爽やかに背中を押してくれる香り
シトラス(オレンジ・グレープフルーツ・ベルガモット)やハーブ(ローズマリー・ペパーミント)など、明るくて軽い香りは、朝のスイッチに最適。朝の支度中や出勤前、アロマストーンに数滴たらしておくだけで、「よし、今日もがんばろう」という気持ちが自然にわいてきます。
日中・仕事中:集中力を高めるクリアな香り
デスクワークや勉強中には、ユーカリやティーツリーのすっきりした香りがぴったり。頭のもやもやを晴らしてくれるような清涼感があります。香りを強く漂わせる必要はありません。小さなアロマストーンをデスク端に置いて、ときどき深呼吸するだけでもリフレッシュ効果があります。
夜のリラックスタイムに:眠りを誘う落ち着いた香り
ラベンダー、サンダルウッド、カモミールなどの穏やかな香りは、副交感神経を優位にして“おやすみモード”へ導いてくれます。寝る1時間前にアロマストーンに垂らし、照明を落として静かに香りを感じる時間をつくると、心も体も自然に眠る準備が整っていきます。
香りを楽しむアイテムいろいろ
アロマストーンに垂らす
私が長く愛用しているのは「アロマストーン」。電気も火も使わず、陶器や石にエッセンシャルオイルを数滴たらすだけ。熱を加えないため、香りがゆっくり自然に広がります。デスク、ベッドサイド、玄関…どこに置いても邪魔にならず、香りの強さも自分で調整しやすいのが魅力です。朝はベルガモット、夜はラベンダーなど、香りを時間帯で変えるのもおすすめ。アロマストーンには水洗いできるものと出来ないものがあります。出来ないものであっても、別の香りと併用しても特に混ざってしまうとかということは気にならないので大丈夫です。柑橘系を使うとやや跡が残る点はやむを得ないところです。

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ティッシュやコットンで香らせる
もっと手軽に楽しみたいなら、ティッシュやコットンに1~2滴垂らす方法も。
机の引き出しに入れたり、バッグのポケットに忍ばせると、開けた瞬間ふわっと香る小さな癒しになります。
直接香りを嗅ぐだけでも
オイル瓶のキャップを開けて、そっと深呼吸。ほんの数秒でも香りが脳に届き、気分がリセットされます。忙しいときほど、この“香りの一呼吸”が効いてきます。
ほかにもこんな楽しみ方
ルームスプレーで部屋の空気をリセットしたり、お香で気持ちを静めたり、キャンドルの炎と香りを同時に楽しむのもおすすめ。ただし、慣れないうちは香りを混ぜすぎず、
一つひとつを丁寧に味わうのがポイントです。
香りを暮らしに取り入れるコツ
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強すぎない香りを選ぶ
→ 匂い酔いを防ぐために、ほんのり香るくらいでOK。風通しのいい場所に置くのがコツ。 -
季節や気分で香りを変える
→ 春はフローラル、夏はミント、秋はウッド、冬はバニラ。香りも衣替えを。 -
ブレンドを楽しむ
→ たとえばラベンダー×オレンジで「癒し+明るさ」を。香りの掛け算も奥深い。
香りは理屈よりも感覚で選ぶもの。
“好きだな”と感じる香りこそが、いちばん自分に合っている香りです。
一日の中に「香りのスイッチ」を置く暮らしを
香りをうまく使うことで、部屋の空気も、自分の気分も、驚くほど整っていきます。朝はすっきりした香りでスタートを、昼は頭をクリアに、夜はやさしい香りで一日を締めくくる。たった数滴のアロマでも、気持ちの流れが穏やかに変わります。今日もアロマストーンにオイルを垂らして、深呼吸をひとつ。香りの力で、自分をやさしく整える時間を過ごしてみてください。