秋の運動会シーズンですね。年を重ねると日本の伝統に対してなぜか理解が進むなと感じる今日この頃ですが、北海道でもないのに各所で運動会で踊られるソーラン節について、ぜひ知ったうえで、運動会でみるとまた違う魅力が見えるのでは?と。

今も色あせない「ソーラン節」の魅力
秋の運動会。校庭に響く「ヤーレン、ソーラン!」の掛け声が響き渡ります。
何年経っても変わらない、運動会の定番プログラム「ソーラン節」。
踊る子どもたちは力強く腰を落とし、全身でリズムを刻む。掛け声の迫力や、そろった動きの美しさに、観客席から思わず歓声が上がる場面も多いですよね。
それにしても、なぜこのソーラン節が、今の時代にもこれほど愛され、全国の学校で踊り継がれているのでしょうか。
そこには、日本人の根底に流れる“身体でリズムを刻む文化”と、“仲間と心を合わせる喜び”が隠れています。
ソーラン節の中身を少し調べてみた
今回改めてソーラン節について調べてみると、単なる「掛け声のある踊り」ではなく、かなり奥深い背景があることがわかりました。もともとのソーラン節は、北海道の日本海側に伝わるニシン漁の労働唄。網を引いたり、ニシンを船に揚げたりする動作に合わせて歌われていたそうです。歌詞の中に出てくる「ヤーレン ソーラン」は掛け声のようなもので、「やるぞ、引け!」といった気合いを入れる意味があるとか。つまり、漁の現場でのチームワークや気迫を表していたんですね。
そして、今私たちが運動会などで踊る「ソーラン節」は、北海道の登別市立登別第三中学校が1990年代に創作した「南中ソーラン」という新しいアレンジがベースになっています。原曲の漁師唄を土台にしながら、よりダイナミックで、見る人にも迫力が伝わるように振付が工夫されています。腰を低く落としたり、網を引くような動きをしたりするのはその名残。学校行事に取り入れられたのも、「力を合わせてやりきる」というメッセージが分かりやすく、生徒たちの成長を象徴しやすかったからだそうです。
地域や学校によっては、掛け声やポーズを少しずつアレンジして「オリジナル南中ソーラン」を作るところもあるようです。実際に調べてみると、よさこいソーランのように鳴子を持って踊るパターンや、衣装を現代風にアレンジするケースもありました。伝統を受け継ぎながらも、その時代や地域ごとに進化しているのがソーラン節の面白さだと思います。
他の踊りも少し調べてみたら、地域ごとの“想い”が見えてきた
ソーラン節の背景を調べていくうちに、ふと気になって、他の地域の伝統的な踊りも少し調べてみました。たとえば高知県の「よさこい」や沖縄の「エイサー」、そして夏の風物詩「盆踊り」。どれも“みんなで踊る”という点では似ていますが、もともとの意味や成り立ちはそれぞれ違っていて、とても興味深かったです。
「よさこい」は、高知県で1950年代に生まれた新しいお祭りの踊り。戦後の街を元気にしようという思いから始まったそうです。鳴子を手にしてリズムを刻みながら、チームごとに衣装や振付を自由にアレンジするのが特徴で、今では全国各地に「よさこい祭り」や「よさこいソーラン」といった形で広がっています。調べてみると、もともとのソーラン節の“力強さ”と、よさこいの“自由さ”がうまく融合しているのが、現代のソーラン節のスタイルにつながっているようです。
一方、「エイサー」は沖縄のお盆の時期に踊られる伝統芸能で、先祖を供養するための踊りです。太鼓を打ちながら進む勇壮なスタイルや、独特の掛け声が特徴。見た目の迫力はありますが、根底にあるのは「感謝と祈り」。沖縄の歴史や精神文化が色濃く反映されています。
そして「盆踊り」は、日本各地に広がるお盆の行事の一つ。地域ごとに曲や振りが違い、地元の人が輪になって踊ります。調べていくうちに感じたのは、盆踊りが“みんなで一緒に”を象徴する踊りだということ。華やかさや競争ではなく、ゆるやかに人がつながる温かさがあります。
こうして並べてみると、どの踊りも「地域の暮らし」や「人の思い」から生まれたものなんだと実感します。ソーラン節は漁師の労働と誇り、よさこいは復興と活気、エイサーや盆踊りは感謝と供養。目的や形は違っても、“体で気持ちを表す”という点ではすべて通じるものがある気がしました。
子どもたちが夢中になる理由:声・体・心を使う一体感
ソーラン節の練習では、ただ踊りを覚えるだけではありません。
腰を落とした姿勢を保ち、声を出し、リズムに合わせて全身を動かす。
これらを何度も繰り返すうちに、自然とチームの中で「呼吸」が合ってくるのです。
体育の授業というよりも、共同制作の舞台のような感覚。
仲間と目を合わせ、声を合わせ、動きを合わせることが、子どもたちにとって大きな達成感となります。
演技が終わったあとの「やりきった!」という表情は、学年を問わず印象的ですよね。
あの表情には、「個人の頑張り」と「仲間の支え」が同時に詰まっています。
進化する「創作ソーラン」:伝統と現代の融合
今では、多くの学校がオリジナルの“創作ソーラン”を取り入れています。
音楽をロック調やヒップホップ調にしたり、振り付けを一部自由化したり。
中には、よさこいの鳴子や太鼓を組み合わせたハイブリッドな演出も。
一見すると伝統から離れているようでいて、実はこれこそがソーラン節の本質。
「時代に合わせて進化しながら、根っこにあるリズムと魂を残す」――
この柔軟さこそ、ソーラン節が長く愛される理由のひとつです。
まとめ:団結の象徴としてのソーラン節
ソーラン節は、もともと仲間と力を合わせる漁師の歌でした。
それが今、運動会という舞台で「協力」「努力」「一体感」を表現する象徴的な踊りへと生まれ変わりました。
秋の空の下で響く「ヤーレン、ソーラン!」。
その掛け声には、世代を超えて受け継がれる日本人のリズムと心の強さが刻まれています。